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基礎編1章:ストレスと認知行動療法の理解
1.現代社会とストレス
現代はストレス社会といわれています。厚生労働省のデータをもとにストレスについて考えてみましょう。まずストレスと関連する「こころの病」の患者数は増加しています。1999年では200万人ほどだったこころの病の患者数が2017年には400万人を越えており20年弱で2倍程度に増えています。仕事に関しては「仕事や職業生活で強いストレスを感じる労働者の割合は54.2%(2019年)」であり、半数以上の労働者が強いストレスを抱えながら働いていることが分かります。また、公務員を対象にした調査では1998年から「こころの病」が長期休職の理由の1位となっており、人数としても80人に1人程度(1.2%)は休職に陥っていることが分かっています。DALY(disability-adjusted life year)という健康寿命の喪失(早死によって失われた期間や疾病により社会的活動などが出来なくなった期間)を表す指標においてもうつ病は1位となっています。
このようにデータを見ていくとこころの病が増えており、仕事ができなくなる最大の要因はこころの病の問題であり、充実した生活を過ごすうえで最も障害になる要因もこころの病であるといえます。数十年程度の期間で人間の体質や遺伝子が変化するとはありません。短期間でこころの病が増加している理由は「ストレス」にある考えられています。時代は変わり2020年に小学校でプログラミング教育の必修化、2022年に高校で金融教育が必修化される予定です。これらの新しい知識は今後の社会生活で必須といえるのでしょう。私はこの2つに加えてメンタルヘルス教育(ストレスの理解と対処など)の必修化も必要だと思っています。理由はこれまで述べてきた通り、現代社会においては何をするにも障害となるのはストレスやメンタルの不調に関するものになるとデータが示しているからです。
2.ストレスの理解
ストレスについて解説します。ストレスを正確に表現するとストレッサーとストレス反応に分かれます。ストレスとはもともと物理学の用語でストレッサーは「圧力」、ストレスは「圧力により歪んだ状態」を意味します。ゴムボールに例えると、ゴムボールを凹ませる圧力がストレッサーであり、その圧力によって凹んだ状態がストレスになります。そして、ボールへの圧力がなくなると(ストレッサーの消失)ボールは元の状態に戻ります。しかし、強く、あるいは、長く圧力をかけ続けた場合には空気が抜けてしまいボールはへこんだまま元に戻りづらくなってしまいます。ボールを使用するには空気を入れるなど回復(元の状態に戻す)作業が必要になります。
ゴムボールを人(社会人)に変えてみましょう。厚生労働省(2019年)の労働安全衛生調査(実態調査)によると、職場のストレッサーの第1位「仕事の量(42.5%)」、第2位「仕事の失敗・責任の発生(35.0%)」、第3位「仕事の質(30.9%)」となっています。社会人は職場でこうしたストレッサーにさらされて心身の疲れ、悩み、焦り、落ち込みなどのストレス反応が生じますが、ストレッサーの消失後(職場を出る、自宅に帰宅など)は元の(穏やかで落ち着いた)状態に戻ります。戻らない場合は美味しい夕食を食べる、家族や友人と団らんする、余暇活動を楽しむ、睡眠をしっかりとるなどの回復(元の状態に戻す)作業が必要です。このようにストレスから回復する作業をセルフケアといいます。セルフケアの観点からは少なくともその日のストレスはその日のうちに回復させて翌日に持ち越さないようにしましょう。翌日に疲労が残っている、土日は日中も眠っていないと疲労が回復しないというのはセルフケアの失敗といえます。日々のストレスに気づき、セルフケアを習慣づけていきましょう。
(第3回はこちら)
認定行動療法士・臨床心理士/公認心理師 岡田
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